「60年前に予言されていた液晶のような超伝導状態を酸化物で発見」の論文が、Science誌に掲載されました

「60年前に予言されていた液晶のような超伝導状態を酸化物で発見」の論文が、Science誌に掲載されました

低温で電気抵抗が完全にゼロになる超伝導状態は、磁場をかけると壊れます。壊れる寸前に一様ではない新奇な超伝導状態が現れうることが、約 60 年前に理論的に予言されていました。この新奇な超伝導状態は提案した4 人の名前にちなんでFFLO 超伝導状態として知られ、超伝導の強さがスメクティック液晶での棒状分子の分布のように空間的に周期変化します。この概念は超伝導研究にとどまらず、レーザー冷却原子気体や高密度クォーク物質といった異なるエネルギースケールの物理にも現れます。ところが現在まで候補となる超伝導体は見つかっているものの、FFLO 超伝導状態の直接的証拠となる超伝導の強さの空間変調を見ることは出来ていませんでした。

本研究グループは、ルテニウム酸化物超伝導体 Sr2RuO4の純良単結晶においてFFLO超伝導状態に特徴的な空間変調(スピン・スメクティック性)を、超伝導の壊れる寸前の磁場領域で核磁気共鳴(NMR)測定により明らかにしました。さらに、これまでの候補物質のFFLO 超伝導状態は10 テスラ(T)を超える高磁場でしか報告されていませんでしたが、驚くべきことにSr2RuO4では1.3 T と一桁低い磁場で実現しており、今後は様々な測定が可能となります。Sr2RuO4はこの新奇な超伝導状態を研究する最適な研究舞台となり、今後の研究が飛躍的に進むことが期待されます。

本成果は2022 年4 月22日にScience に掲載されました。

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