バックパンチ
物理学第一教室・教授 前野 悦輝
最近、スタンフォード大学に滞在したときの考案品をご紹介します。米国では書類には、レターサイズという11インチ×8.5インチの用紙が使われ、ファイリングには3つ穴のパンチを使います。米国滞在で不便なのは、日本からの書類や日本に提出する書類はA4版用紙を使って2つ穴でファイリングする一方で、米国用にはレターサイズに3つ穴を開けなくてはならないことです。A4は縦に長く、レターサイズは幅広なので、お互いのファイルバインダーにすっきりとは収まってくれません。用途別に分けるにしても、穴あけ機が2台いるのは面倒ですし、穴位置調整のできる大型のものは個人用には不向きです。米国では昔からB社の製品が数ドルで広く販売されており、今回も早速購入しました。この3つ穴米国規格を使って、何とかA4規格の位置に簡単に2つ穴を開けられないものかと思案の結果、大学到着してすぐに裏ワザを考案しました。
下の写真をご覧下さい。まず、A4用紙の下端を3つ穴パンチ機の真ん中にあてて穴を開けます。すると穴1個が開き、下端には半月型の穴ができます。ここで用紙を裏返します。そして再び下端をパンチ機の真ん中に持ってきて1個の丸穴と半月穴を開けます。すると、なんと2つの丸穴はA4規格の位置にぴったりと開いているではありませんか!この操作をしやすいように3つ穴パンチ機の中央部にA4用紙用のガイドストッパーをつけました。また、レターサイズの紙にA4規格の2つ穴を開けるためのガイドもつけ、両方の規格に自在に対応できるものが出来上がりました。紙を一旦、裏返してパンチ穴を開けるので、「バックパンチ」と名づけました。私は大学院時代にカリフォルニア大学に留学しており、当時も両規格の用紙にきちんと穴を開ける問題は私を悩ませていました。ああすっきりした。
スタンフォード大学といえばハイテク・ベンチャーの盛んな土地柄です。学内の特許オフィースにはWEBを通じて発明経緯について申告するようになっており、審査官が相談に乗ってくれます。そのシステムの勉強がてら(ホンモノの大発見をしたときの予行演習に)、このガラクタ発明品を持ち込みました。若い審査官は開口一番、「わが国以外では別の規格の用紙が使われているとは知りませんでした。」(こりゃアカン・・・)米国人には商品価値無しですね。というか、まあ誰も買わんでしょ、確かに。 米国に留学される方、長期出張される方でもしご興味の方がおられましたら、バックパンチの作り方お教えします。